2008年度から健康保険組合に義務付けられる、メタボリック対策の健診も担当する「ドクター内山」が、長年の臨床や製薬企業の医療コンサルタントとしての経験を元に健康維持のための様々な情報を気軽に書き綴るブログ

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突発性難聴体験記

先日突発性難聴という病気になってしまいました。
歌手の浜崎あゆみさんがなったことで有名になった病気です。
浜崎さんは残念ながら完全には回復しなかったようですが、
私の場合幸いにもほぼ完全に回復しました。

結構多い病気なので、少々長くなりますが、参考までに経過を書くことにします。

始まりは耳が詰まったような感じです。
病名のとおり、まさに突発性で私の場合は左耳でした。
最初はジムでの水泳で耳に水が入ったのか、
風邪を引いて耳管
(図を参照:鼻とつながっており、内耳の気圧を調整する働き)が
閉じてしまったのかと考えていました。
感覚としてはちょうど高いところに急に上ったときに耳がボーとするといった感じです。
唾を飲んだり、あくびをしてもいっこうに改善せず、
電話を左耳で聞こうとするとエコーがかかったような声になり
よく聞こえないのです。

たまたま、以前に大学時代の同級生とゴルフをやったとき、
その中の一人が突発性難聴になったという話を思い出し、
これが噂の、と変な感心をしてしばらく様子を見ていました。
しかしいっこうに良くなる気配はなく、
耳鼻科をやっている同級生に電話をしました。
そうすると2,3日で回復しなければ早く耳鼻科で検査をして、
治療を始めた方がよいとのこと。
彼曰く、
「治療開始は早いほうが治りは良く、遅れると回復しないこともある」とのことでした。
受診した耳鼻科では、滲出性中耳炎でも同じような状態になるということで
鼓膜も診てもらいましたが、こちらは正常。
聴力検査では中音から低音域にかけて
みごとに50デシベル程度まで低下していました。

原因としてはストレスが一番多いようで、
ウイルス感染が原因という説もありますが、実はよくわかっていないようです。

受診した耳鼻科の先生からは最近ストレスは多くありませんか、
としつこく聞かれました。
忙しいことには変わりありませんが、それをストレスと感じたことはなく、
後で精神科の友人から聞きましたが、
そういう人間が過労死しやすいのだそうです(この話は別の機会にまとめたいと思います)。

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それはともかく、耳で音を聞くとはどういうことかを図を見ながら解説しましょう。
耳で集められた音は外耳道を通って、鼓膜をふるわせます。
鼓膜の振動は耳小骨(鼓膜側から槌(つち)骨、砧(きぬた)骨、
鐙(あぶみ)骨といって人体の中で一番小さな骨です)を伝って
蝸牛と呼ばれる、まさにカタツムリのような形をした組織に入ります。
さらに蝸牛の中に並んだ細かい毛を振るわせてそれを電気信号に変換して神経に伝え、
音として感じ取ります。

蝸牛の入り口は高い音を、奥に行くに従い低い音を感じ取るような
仕組みになっています。突発性難聴という病気の実態としては、
蝸牛の中にリンパ液が充満していて、
その対流が滞ることが原因ともいわれています。
ちなみに蝸牛にくっついている3本のループは半規管といい、
体の傾きや動きを感じ取る組織です。

さて突発性難聴の治療としては、副腎皮質ステロイド剤が基本で、
かなり大量に使います。私はそのまま仕事をしながら治療しましたが、
ひどい人では入院して治療する場合もあります
(ほんとうは外来通院でも家で安静が基本で、私のように仕事をしていてはいけません)。
ステロイド剤以外ではビタミンB12がよく併用されます。
それ以外では高圧酸素療法なども使われているようですが、調べてみたところ、
エビデンスの高い治療法は、ステロイド剤以外無いようです。

副腎皮質ステロイド剤は古くから使用され、
いろいろな病気の治療に欠かせない治療薬ですが、
副作用も多く代わりの薬剤が望まれています。
しかし多くの分野で相変わらず治療の第一選択薬となっています。

私の場合、3日間ステロイド剤を飲んだところ、
聴力検査で中音域がまず改善して、更に3日間で低音域も正常に近くもどりました。
耳の詰まった感じは徐々に軽くなり、その後3,4日でそれも改善しました。

いろいろな統計がありますが、50%から70%はほぼ完全に回復し、
10%程度は回復しない、特に障害の程度が強いと回復が悪いようです。
ということで、病気にならないように食事や運動に気をつけていても、
なる病気もあるということを、身をもって体験しました。

だから何もやらなくて良いということではなく、
気をつけていれば防げる病気はしっかりと注意して、
少しでも病気になる確率を下げることが肝要ですね。

2008/10/15 17:55:07 | コメント (0) | トラックバック (0)

脳内脂質代謝(イクラと睡眠質改善)

脳は重量としては体全体の2%程度しかありませんが、
全体のエネルギー消費量の20%近くを消費しています。
このエネルギー源はグルコース(ブドウ糖)ですが、
脂質もまた、
神経細胞の膜やシナプスという神経細胞突起でのつながりを
維持する上で重要です。

DHAは脂肪酸の一種ですが、n-3系の多価不飽和脂肪酸といって、
動脈硬化を防いだり血管が詰まる原因である
血小板凝集を抑えたりする作用があります。
またDHAは脳の血液脳関門というバリアを通り抜けて
脳実質に取り込まれ脳の代謝に利用されます。
少数例の臨床試験ではありますが、
DHA投与により認知症患者の機能改善が認められています。

DHA以外の脂質ではフォスファチジルセリンや
フォスファチジルコリンというリン脂質が
神経細胞膜やシナプスという神経細胞突起の
つなぎ目の機能に欠かせない脂質で、
神経細胞が正常な機能を営む上で重要な因子です。
フォスファチジルコリンは記憶や計算といった
脳の高次機能を司っているアセチルコリン系神経へコリンを
供給することでも重要な役割を果たしています。

イクラの中にはこのDHAとフォスファチジルコリンが結合した特殊な脂質があり、
この複合脂質を投与したところ睡眠の質が改善したとの報告があります。

睡眠は眼球運動が見られないNon-REM睡眠と
すばやい眼球運動が見られるREM睡眠とに分けられますが、
通常の睡眠ではこれら2種類の睡眠が交互に現れます。
この2つがバランス良く出現することにより熟眠感が得られるとされています。
このイクラに含まれる脂質は長めのREM睡眠時間をもたらし、
結果としてよりよい熟眠感が得られるようです。
サプリメントとして摂取した脂質が、
どの程度脳内の脂質に影響を与えるかまだ定まった見解はありませんが、
こういった脂質が睡眠に係わるというのは大変興味深い知見です。

睡眠の質は疲労感などにも影響を与え、日常生活の質に深く関わるため、
今後さらに研究されることが期待されます。

2008/10/07 17:55:46 | コメント (0) | トラックバック (0)

医療保険の矛盾が教えてくれること

「高齢化社会を本格的に迎え医療費は高騰の一途。
そこで後期高齢者医療保険制度(長寿医療保険)を設立し、
高齢者の皆様にも
医療費の一部を負担してもらおうということになりました」

これは厚生労働省の説明であります。
この文章は高齢者になると
病気になる人が増えるということを前提に
書かれています。

医療保険は病気になって初めて支払われますから、
どんなに病気にならないように努力しても
国からは一銭も支給されません。
なのに医療保険は、
病気で保険を使っている人と同じ金額を徴収されます。
これでは病気にならないように努力しましょうと
厚労省がいくら叫んだところで、
金銭面だけを考えれば誰も実行しないでしょう。
高齢化社会で保険財政の破綻が危惧されるというなら、
国はもっと疾病予防にお金を使うべきです。

今回のメタボ健診でも同じことです。
メタボ健診プログラムは国が決めました、
実行は健保組合で自分たちのお金でやりなさい、
良い結果が出ないと高齢者医療保険への
拠出金の額を上げますよ…という具合です。
この辺は各方面から批判も出ていて、
見直しも検討されているようですが、
そうはいっても国のやることを変更するのは時間がかかります。

医療保険の矛盾もさることながら、
やはり自分のことは自分で管理する、これが大事です。
誰しも病気になりたくはないでしょう。
メタボがすべての病気の根源とはいいませんが、
生活習慣を変えることで予防できる病気は数多くあります。

生活習慣の中で変更して健康に一番効果があるのは食事です。

今後もこのサイトでは健康によいレシピとともに
生活習慣を変えるヒントを出していきます。

病気になりたくない人は
ぜひこのサイトの記事をぜひ継続して読んでください。
前述の話からすれば病気になって
保険料を使わないともったいない気もしてきますが、
やっぱり元気に生活できた方がずっと良い。
そう思いませんか?

2008/09/17 11:25:56 | コメント (0) | トラックバック (0)

『コードブルー』ふたたび

またまた「コードブルー」というテレビ番組のお話で恐縮です。
前々回のストーリーでは、黒田医師という指導医が
レジデントをかばって自分が崩れた鉄骨に右腕を挟まれてしまい、
救命のために右腕を切断せざるを得ず、その後再接着には成功するも
外科医としてのキャリアは断念しなくてはいけないという話になりました。

どうも肘よりちょっと上での切断だったようですが、確かにこの部位での切断と再接着は技術的には
それほど難しいものではありません。
また切断も押しつぶされて切断したものではなく、再接着を前提に切断されたものですので、
神経、動脈の損傷も非常に少ない状態で切断されているため、
後の回復は比較的よいと思われます(もちろんこの話はフィクションです)。

ただこの黒田医師の設定が50歳くらいでしょうから
神経の回復がどの程度かというところが心配です。

手足に行く神経は脊髄から出るとその先は末梢神経といわれ、
神経細胞そのものはそこにありません。
神経細胞は脊髄の中にあって、そこからでた突起が細長くなって
神経の中を走って手足の末端まで入っています。

途中で切れてもきちんとつないでやれば、
また植物の根のように神経細胞のある脊髄から手足の先端に向かってのびていきます。

伸びる速度は平均的には1日1ミリくらいの速度です。
このテレビ番組のように上腕部ですと、細めのうどんくらいの太さの神経を3本修復する必要があります。
図に末梢神経の構造を示します。

<末梢神経の構図>
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1本の神経にはそれぞれの中に10本以上の細い神経線維束があり、
その一つひとつが筋肉を動かす運動神経だったり、皮膚からくる知覚神経だったりするわけです。

もし切れた断端の両側でどの神経束がどれだかわかれば
それらの神経線維束同士をつないでやれば非常に機能回復は早くなります。

ただし上腕部での切断となりますと、切断したところから末端まで40cm以上はありますから、
大雑把に言って回復には1年以上を要する事になり、その間に神経の通っていない筋肉は、
血液がしっかり通っていてもどんどん萎縮しますから、
神経が届いた頃には萎縮が進んで使えなかったという事にもなりかねません。

そのため電気刺激を与えたりして、
末梢の筋肉が萎縮しないようにするリハビリが必要となります。

先ほど50歳くらいだとちょっと心配、といいましたが、子供ではこの回復が早くなります。
私もかつて割れたガラスで上腕の半分くらいを切ってしまった小学生の修復をした事がありますが、
神経の切断端がきれいだったのでうまく修復でき、後ほど無事に手も動くようになりました。

「先生、動くようになったよ」

と言った、あのときの患者さんの笑顔は今でも忘れる事ができません
(この話はフィクションではありません。念のため)。

2008/09/09 15:56:54 | コメント (0) | トラックバック (0)

ドラマ『コードブルー/ドクタ-ヘリ』について

木曜日のテレビドラマで「コードブルー/ドクターヘリ」という番組があり、
毎週見ています。
実際はあんなに何でも治ったり、うまくいったりはしませんし、
第一あれほどの美男、美女ばかりの病院はありませんが、
それ以外はかなり忠実に実際の医療現場を再現しています。

見ていると救急病院の当直で悪戦苦闘したり、
美人ナースに心をときめかしたりしていた研修医時代を思い出します。
ただ家内といっしょに見ているとつい、
「あれは本当はこうなってるんだ」
などとつっこみを入れてみたり、
医学的な解説をついしてしまったりして、うるさがられています。

ドラマの研修医に限らず
本物の病院のお医者さん達もほんとうによく働いています。
私も市中病院に勤務していた頃は、
当直で夜中に患者さんが大勢来られて寝られず、
翌日も外来や手術があって休めず、
ということがしょっちゅうでした。
私は何より当直が嫌いで、製薬企業に移ったのも
学問的興味もさることながら、
この当直の地獄から抜け出したかったのが大きな理由のひとつでした。

大学時代の同級生でまだ頑張って救急の現場で働いているものもおりますが、
ごくろうさまとただ頭が下がる思いです。

今回のブログはなにもオチはなく、
医療最前線の現場で働くドクター達にエールを送って終わりです。

みんながんばれ!

2008/08/25 15:03:15 | コメント (0) | トラックバック (0)

名残の季節

10月は名残(なごり)の月ともいいます。
「名残惜しい」の名残です。これには2つの意味があるようです。
お茶を点てるために湯を沸かす風炉と釜。5月から10月までは畳の上に風炉をおいて、これに釜かけて湯を沸かします。11月から4月までは畳を切って床から掘り下げた炉に釜をかけて湯を沸かします。10月はこの風炉の最後の月であり、風炉に名残を惜しんでこの名前があるというのがひとつ。
もうひとつには5月に摘んだ新茶を茶壺に入れて半年間熟成させ、11月に茶壺の封印を解いてこのお茶を使います。10月ともなるとこの茶壺のお茶も残り少なくなり、名残惜しいという意味もあるようです。いわばわびの極致のような月ですね。

10月は夏の終わりの暑さもほとんどなくなり、秋の長雨も終わって晴れの日が多くなる、過ごしやすい季節です。少し肌寒い日も出てきて、夏の間には客とは離れた位置にあった風炉も、この名残月には中置きといって畳み半ばまで風炉を客に近づける位置に据えます。ほんの10数センチ客に炭火を近づけたところでそれほど暖かみは変わらないとは思いますが、これが茶人の心遣いというところでありましょうか。

名残の季節の食材は、その風情とは裏腹に、にぎわい豊かです。サンマ、サケ、筋子などの魚食材やクルミ、栗などの木の実、また大豆やそばもこの時期収穫されるので、これらを使って新豆腐や新そばもまた香り豊かで楽しみたい季節です。それに高価で滅多に口に入りませんが松茸も旬ですね。また菊や冬瓜もこの時期、茶席にはよく使われます。
こんな時期は食材ばかりではなく、冷暖房ではない、自然の空気に触れて季節の温度を楽しんではいかがでしょうか。旬の食材は生命のエネルギーに満ちているといわれます。移ろいゆく季節を楽しみながら、自然のエネルギーを取り込んで癒されてみませんか。

2007/10/29 23:23:30 | コメント (0) | トラックバック (0)

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